2013/07/15

ヨーロッパ選手権 大会9日目 「集中力」


「シュコダはドコだ?」


 さあ。いよいよ後半戦の始まりです! 前後半のクルー3名とパイロット、合わせて4名が勢揃いしたこの日。朝は福崎さん(以下ザッキー)の元気な声で始まりました。

「大ちゃん朝だよー」

 眠い。とっても眠いです。昨夜11時に秘密基地(借家)に着いて遅くまで引き継ぎをしてましたから。でもザッキーのメモ&解説は詳細かつ綿密でとっても助かります。さすがにまるのクルーを何度もこなしてきたベテラン。ちなみに私は今回が初めてです。

天気は良く、上り坂の印象。眠い目を擦りながらシャワーを浴びていると台所では赤石さん(以下敬称略)とザッキーが朝食の用意。まるはグライダーのバッテリーや補機類をクルマに積み込んだりお昼ご飯のオニギリを作ったりと準備に余念がありません。全員が食卓に揃うと、朝ご飯をおいしくいただいて8時に出発しました。いやー友人同士賑やかな朝食って楽しいです。

さて、滑空場までは秘密基地から約20分の距離。今回我々の足となって働いてくれるメインカーはチェコ製のシュコダです。駐車スペースが家のすぐ脇であるにも関わらず「シュコダはドコだ?」「しょこだ!」などと久し振りの結成にも関わらず軽快にダジャレを飛ばす福崎、河村コンビ。でも実は私、慣れぬ左ハンMT車と右側通行にちょっと緊張していました。




タスクA と タスクB そして…


 到着後、まるの愛機 “ディスカス2CT” のターポリン(機体カバー)を外しGPSやバッテリー、ピトー管(速度を計るのに必要)などを装着、機体をクルマに連結してグリッドに運びます。今日のグリッドは写真の通り。まるの機体はスタンダードクラスの “ECC” なので前から10列目に並べました。この順番で曳航機に引っ張られて行くのです。

 そして10時からブリーフィング。この時既に天候が悪くなり始めており、競技タスクは天気のいい日より短いものが発表されました。タスクについてはまた後日解説いたしますが、要は気象条件に合わせ「より狭いエリアで、より短い時間に競技が行える」ように調整されたワケです。

実はこの時 “タスクA” とさらに気象が悪化した場合の “タスクB” が発表されたのですが、パイロットは当然プランAで準備を始めます。日本から用意してきた自作のマップの中に必要となるチェックポイントを書き込んで行きます。

 面白かったのは、他クラス用のタスクまで書き込んでいたこと。これはまるがマークしている他クラスの上級者に付いて行くためと、間違って他のタスクのエリアまで付いて行かないため、その両方の意味があるのでしょう。
この日は全体のエリアが縮小されたこともあって、他クラスのタスクも重なっている部分が多かったそうです。そんな日は上昇気流ができるエリアも限定され、上手い飛び方をするライバルを見抜く目も大切になってくるそうです。







情報収集の先にあるもの


 さてその “タスクA”。本来なら競技機が曳航される時間になっても一向にアナウンスがありません。実はお昼にかけて気象条件がさらに悪化して行き、主催者は開始の判断が下せない状態。選手の間にも「今日はノーコンテストかも知れない」という空気が広がり始めていたのでした。

 でもパイロットはそこで集中力とモチベーションを途切らすワケにはいきません。これは、結構大変なことです。

 でもチーム・リーダーの赤石は「まるは過去に参戦したワールド(世界選手権)よりずっと進化してる。昔ならいつでもピリピリしていたのにね」と落ち着いた表情。まる本人もそこを自覚していて、作戦を立て終わると気持ちを切り替え、他国の選手やリーダーの所に積極的に訪れて情報交換、なんてことをサラっとスラッとやってのけます。

 それも単に競技の話というより、どちらかというと日本のグライダー事情に参考になる情報を聞き出す作業。忙しいチームには後日のインタビューも依頼していて赤石とふたりでびっくりするほどの外交官ぶり。まるの欧州選手権への出場目的が単に技量アップ、成績アップにあるのではなく、その先の「教育」にあることを改めて実感しました。

 この話はいずれ詳しくブログで触れて行きますが、まるの情熱は今「もっと多くの人が早くグライダーの真の楽しさをエンジョイできるよう操縦教育にイノベーションを起こす」ことに注がれつつあります。それも10年単位の長期スパンで目標を立てており、最近はこの事実を知った周囲の人々がチームを応援し始めている、と言っても過言ではないのです。すくなくともチームリーダーの赤石はそれを一番理解しています。



集中力のコントロール


 話が脱線してしまいましたがこの日、14時まで保っていた我々のモチベーションが突然不要になりました。結局条件が向上せずノーコンテストにする、という無線が入ったのです。

 その瞬間「さあ、帰ろう! 今日は何食べよっか?」と明るく笑うまるは、確かに成長したんだなーと感じました。その瞬間まで彼は、時差ボケでヘベレケな我々をよそに、さらに短く提示された “タスクC” の作戦を
真剣に練っていたのですから。昔のまるなら文句のひとことも言いそうなものです。

 まあ、相変わらず会場のスタッフに声をかけて両手に花の写真を撮る作業は忘れないんですけどね。あ、リーダーもあやとりで国際親善やってる場合じゃないですよ!





お疲れ様 ザッキー



そんなワケで会場は撤収作業で慌ただしくなり、あれよあれよという間に皆いなくなって行きました。その早いこと早いこと! 我々も、ようやく顔を出し始めた太陽の下でそそくさと撤収。ショッピングモールに寄ってお茶したり買い物したりしながらまったり。スーパーのオニク売り場はとっても魅力的で私の時差ボケも一気に吹っ飛んでいったのでした。

 この天気はどうやら明日も続きそうです。が、チーム一同集中力を保ちながら戦っていこうと思います。ちなみに、前半戦まるを支えたザッキーは本日をもちましてお役御免。山のような仕事の待ち受ける日本へと旅立って行きました。お疲れさま。

おっと。もうこんな時間ですネ。四輪駆動車の編集をやっていた私としてはショッピングモールで展示されていた新型RAV4のことを調べたかったのですが寝るのもクルーの仕事ですもんね。

ではおやすみなさい! そしてまた明日!!(河村)

今大会のクルーが全員集合。モンベルチャレンジ支援のアウターでよりチームらしくなったと思いません?

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